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    琵琶湖の北端、緑豊かな賤ヶ岳(しずがたけ)のふもと。歴史の面影が色濃く残る北国街道を歩いていると、ふと風格ある建物に出会います。
    それが、日本でも屈指の歴史を持つ老舗の酒蔵「冨田酒造」です。

    この酒蔵が産声を上げたのは、なんと1530年代(天文年間)という戦国時代のど真ん中。
    看板の日本酒には「七本鎗(しちほんやり)」という力強い名前が付けられていますが、これは蔵のすぐそばで起きた「賤ヶ岳の合戦」で大活躍した7人の英雄、「賤ヶ岳の七本槍」にあやかったものです。

    何百年もの間、絶えることなくお酒を造り続けてきた冨田酒造ですが、彼らが一番大切にしているのは「地元」です。
    遠くの有名な材料を集めてくるのではなく、地元の契約農家さんと二人三脚で育てた滋賀県産のお米と、地元の奥伊吹山系から湧き出る澄んだ水だけを使うことにこだわっています。
    その土地の風土をそのまま瓶に詰め込んだような、本物の「地酒」造りを追求しているのです。

    近年、彼らはさらに一歩踏み込んだ挑戦をしています。
    2010年からは、農薬を一切使わずに育てたお米でお酒を造る「無有(むう)」というシリーズをスタート。
    さらに、昔ながらの「木桶」でお酒を仕込んだり、自然の微生物の力を借りてゆっくりと時間をかけて発酵させる「生酛(きもと)」という、非常に手間と時間のかかる伝統的な造り方を復活させたりしています。
    効率やスピードが求められる現代にあえて逆行し、「自然」と「時間」を味方につける道を選んだのです。

    そうして自然の力で丁寧に造られた「七本鎗」は、お米の豊かな旨味が口いっぱいに広がる、しっかりとした「骨太」な味わいが特徴です。
    無農薬や伝統製法で造られたものは、柔らかさと深いコクがあり、時間をかけて熟成させるとまた違った表情を見せてくれます。
    滋賀の小さな蔵で造られるこのお酒は、その確かな物語と味わいから、今や日本国内の愛好家だけでなく、海を越えて海外の人々にも愛飲されています。

    もし滋賀県長浜市を訪れることがあれば、ぜひ蔵の直売所に立ち寄ってみてください。
    お酒の専門的な知識なんて必要ありません。「戦国時代から続く、地元の自然と人の想いがギュッと詰まった一杯」という物語を知っていれば、その一口はきっと、心に残る特別な体験になるはずです。