蔵元紹介Brewery
- 青森市の海風が届く油川の町に、ひときわ静かに時を重ねてきた蔵があります。
西田酒造店は明治のはじめにこの地で産声を上げ、今も変わらず同じ場所で酒を醸し続けています。
青森市で唯一の酒蔵として、土地の空気や人の暮らしに寄り添いながら、その味わいを育ててきました。
転機となったのは、昭和の終わりに近い頃に生まれた「田酒」でした。
米だけでつくる酒という、当時としては決して主流ではない道を選びます。
効率や流行よりも、米そのものの力を信じる。
その姿勢は少しずつ飲み手の心をつかみ、やがて全国に名を知られる存在になっていきました。
蔵の中で大切にされているのは、米の旨みをきちんと引き出すことです。
余計な手を加えすぎず、けれど細やかなところには徹底して気を配る。
活性炭による濾過をやめ、ほんのりと色が残っても味わいを優先する選択も、その積み重ねのひとつです。
口に含むとふくらみがあり、すっと消えていく後味には、そんな考え方がそのまま映っています。
もうひとつの銘柄「喜久泉」は、創業当初から続く名を受け継ぎながら、吟醸造りを軸に磨かれてきました。
やわらかな香りとすっきりした飲み口は、田酒とはまた違う表情を見せてくれます。
蔵の設備も時代に合わせて整えられてきましたが、目指すところは変わりません。
瓶での火入れや冷蔵管理によって、できあがった酒の状態を丁寧に保ち、飲み手のもとへ届ける。
その一つひとつの工程に、変わらぬ意志が息づいています。
いまや田酒は手に入りにくい酒として知られるようになりましたが、蔵はあくまで地元や信頼できる酒屋とのつながりを大切にしています。
静かな港町で始まった酒造りは、派手さはなくとも、確かな味わいとともに、今日も変わらず続いています。





